フリーランスをしていて事業資金が足りなくなると、ついつい消費者金融やカードローンに頼ってしまうものです。しかし消費者ローンには多大なリスクがあり、安易に利用するのはおすすめしません。
本記事では、フリーランス・個人事業主に消費者金融やカードローンの利用をおすすめしない理由を4つご紹介し、資金がないときにどのように対応すればよいのかもお伝えします。
- 消費者金融やカードローンには「総量規制」が適用される
- フリーランスが消費者ローンを利用すると、将来必要なときに銀行融資を受けにくくなる
- 消費者金融の借金を返せなくなるとブラックリスト状態になる
- 最終的に差し押さえを受けてしまうリスク
- 消費者金融よりファクタリングをおすすめする理由
フリーランスの資金調達に消費者ローンが適さない4つの理由
フリーランスが事業用資金を調達するとき、消費者金融やカードローンをおすすめできない理由は主に以下の4つです。
- 消費者ローンには総量規制が適用される
- 将来の融資を受けにくくなる可能性がある
- 消費者ローンを滞納するとブラックリスト状態になる
- 消費者ローンを返せないと差し押さえを受けてしまうリスクがある
それぞれについてくわしくみていきましょう。
消費者金融やカードローンに適用される総量規制とは
消費者金融やカードローン、クレジットカードのキャッシングなどの借金には「総量規制」が適用されます。
総量規制とは「貸金業者は本人の年収の3分の1までしか貸付をしてはならない」というルールです。2020年6月18日に施行された改正貸金業法により、導入されました。
たとえば年収が600万円の方であれば、200万円までしか借金できません。すでに200万円の借金がある状態で消費者金融に申し込んでも審査に落とされてしまいます。
総量規制の意図は、貸金業者による過剰な貸付を防いで多重債務者の発生を抑制することにありました。実際、総量規制導入後、複数の貸金業者で借金をする多重債務者の数は減少しています。
フリーランスと総量規制
総量規制はすべての貸付に適用されるものではありません。
以下のような借金は総量規制対象外なので、借入額が年収の3分の1以上となっても利用できます。
- 銀行からの借り入れ
- 不動産購入のための借り入れ
- 個人事業主の事業資金
- クレジットカードのショッピング
- 自動車購入のための担保つきの借り入れ
- 不動産担保ローン
- 顧客に一方的に有利になる借り換え(おまとめローンなど)
フリーランスの事業資金は「個人事業主の事業資金」に該当するので、借金の総量規制の対象外となります。
実際の運用状況
貸付側にとっては生活費か事業資金か判断できない
ただし実際にはフリーランスが消費者金融やカードローンを利用する際にも総量規制が問題になるケースがあります。
貸付側にしてみると、フリーランスが「生活費」のために借り入れようとしているのか「事業資金」として借り入れようとしているのか判然としないためです。どちらかわからない以上、総量規制のルールに従って貸付を控えよう、という判断をされるケースが少なくありません。
すでに借金していると融資を受けにくくなる
消費者金融会社もローン会社も「すでに別会社で高額な借金をしている人」には融資をしぶります。借金額の多い人は、今後返済が滞るリスクが高いと考えられるためです。
たとえ総量規制にひっかからなくても、すでに他のカード会社や消費者金融でいくらかキャッシングなどを利用している状態であれば、審査に申し込んでも落とされる可能性が高くなるでしょう。
そもそもフリーランスは信用が低い
フリーランスは収入が不安定なので、会社員と比べてどうしても信用が低くなります。そもそもカード会社やローン会社、消費者金融の審査に通りにくいので、総量規制と無関係に審査に落とされる可能性もあります。
以上のように、フリーランスにとってカードローンや消費者金融は意外と使いにくいローンといえます。
これが1つ目の「フリーランスに消費者ローンをおすすめできない理由」です。
銀行融資を受けにくくなるリスク
フリーランスが安易に消費者金融やカードローンを利用すると、将来銀行などの金融機関で融資を受けにくくなるリスクがあります。
フリーランスであっても事業拡大するときの投資資金、あるいは事業不振となったときの運転資金などのため、銀行融資を必要とする状況はありえます。
そんなとき、消費者金融やカードローン、キャッシングなどを利用していると、銀行融資の審査に通るのが非常に厳しくなってしまうのです。
キャッシングやカードローンで銀行融資が難しくなる理由
消費者金融のキャッシングやカードローンを利用すると、なぜ銀行融資を受けられなくなるのか「仕組み」をみてみましょう。
ポイントとなるのは「信用情報」です。消費者金融やカード会社などの貸金業者、銀行や信用金庫などの金融機関はすべて「信用情報機関」に加盟しています。
信用情報機関とは
信用情報機関とは、個人の借金に関する情報を集めた「個人信用情報」を管理している機関です。日本には、以下の3つの指定信用情報機関があります。
- CIC
株式会社シー・アイ・シー。クレジットカード会社や信販会社がメインとなって組織している信用情報機関です。カード会社はもちろん、消費者金融会社や銀行などの金融機関が加盟していることもあります。 - JICC
株式会社日本信用情報機構。消費者金融会社がメインとなって組織している信用情報機関です。消費者金融会社だけではなくカード会社や信販会社、銀行などの金融機関が加盟している場合もあります。 - KSC
全国銀行個人信用情報センター。銀行や信用金庫等の金融機関が組織し加盟している信用情報機関です。
3つの信用情報機関は情報を互いに共有しているので、いずれかの信用情報機関に延滞情報などが登録されると、他の信用情報機関へ照会されたときにも延滞情報を知られます。
個人信用情報に登録される情報
個人信用情報には、以下のような情報が登録されています。
- どこからどの程度の借り入れをしているか
- 返済状況
- 滞納状況
- 過去の債務整理の履歴
個人信用情報を確認すると、その人が今まできちんと返済をしてきたのか、長期延滞していないか、債務整理の履歴がないかなどがわかります。
金融機関の融資審査の仕組み
銀行や信用金庫、公庫などの金融機関は融資の申込みを受けると、その人の個人信用情報を確認し「信用できる人か」「貸付を行っても安全か、きちんと返済してくれそうな人か」を判断します。
情報照会によって「消費者金融やカード会社で多額の借金をしている」「近い過去に消費者金融やカード会社を利用して借金していた」事実が明らかになると「返済能力に不安がある」と判断される可能性が高まります。特に「現在消費者ローンを利用している」状況では審査に通るのは困難となるでしょう。
フリーランスが消費者金融を利用すると融資の審査に通りにくい
フリーランスはただでさえ正社員などと比べて信用が低く、金融機関からは厳しい評価を受けます。消費者ローンを利用していなくても銀行融資を受けにくいのに、「消費者ローンを利用している」事情が加わると、融資を受けるのは極めて厳しくなるでしょう。
事業拡大でお金が必要なときに融資を受けられなければ、せっかくの事業計画も諦めざるを得ません。事業資金が底をついて廃業をせまられたときに融資を受けられなければ、廃業して債務整理しなければならないでしょう。
将来本当に必要なときに融資を受けるためにも、安易な消費者金融やカードローンの利用は控えるべきといえます。
ブラックリスト状態になるリスク
消費者金融やクレジットカードのキャッシング、カードローンなどを利用すると、金利をつけて毎月返済を継続しなければなりません。収入の不安定なフリーランスの場合、返済を滞納してしまうケースも多々あります。
借金を支払わなければ、当然貸金業者から支払いの督促が来ます。当初は電話がかかってきたり手紙で催促状が送られてきたりする程度ですが、2ヶ月くらい滞納すると内容証明郵便で「一括払い請求」が来ます。
多くの場合、その時点で信用情報機関に「延滞情報」が登録され、いわゆる「ブラックリスト」の状態になってしまいます。ブラックリスト状態とは、信用情報に延滞情報や債務整理の事故情報が登録されて、クレジットやローンを一切利用できない状態です。
借金の総量規制を超えても銀行カードローンであれば利用できる可能性がありますし、事業資金は一応総量規制の対象外です。しかし「ブラックリスト」になると、どこの銀行でも公庫でもクレジットカード会社でも消費者金融でも、一切の借金ができません。
新規のクレジットカード発行もできませんし、すでに持っているカードも止められます。
日頃クレジットで決済することの多いフリーランスには死活問題となるでしょう。
さらにスマホ端末の分割払いもできなくなって、保証会社つきの賃貸アパートの審査にも通らなくなってしまいます。
ブラックリスト状態になると非常に不便な生活を強いられますし事業にも支障が及ぶので、可能な限り避けるべきです。
消費者金融やカードローンを利用すると、ブラックリストのリスクがあるのは大きなデメリットといえるでしょう。
差し押さえに遭うリスク
消費者金融やカードローンの支払いをせずに長期延滞していると、内容証明郵便で一括請求された後に「裁判」を起こされる可能性があります。
支払督促を申し立てられるか、訴訟を起こされるケースが多数です。
これらの裁判手続きに対応せずに放置していると、仮執行宣言や判決が出てしまい、貸金業者から「差し押さえ」をされてしまう可能性があります。
差し押さえの対象資産は以下のようなものです。
- 現金
- 預貯金
- 車
- 不動産
- 株や債券
- 出資金
- 積立金
- パソコン、絵画や時計、貴金属などの動産類
- 売掛債権
預金や売掛債権を差し押さえられると、フリーランスの営業も非常に厳しくなってしまうでしょう。
差し押さえを受けるような状態になれば、いよいよ債務整理によって解決するしかなくなります。自己破産をしたら手持ちの財産をすべて手放さねばならず、これまで積み上げてきた信用も0になってしまうでしょう。
消費者ローンを利用すると返済を滞納して最終的に財産も信用も仕事も失ってしまうリスクがあります。
ファクタリングで資金調達するメリット
フリーランスが資金調達するなら、消費者金融よりもファクタリングを利用するようおすすめします。以下のようなメリットがあるからです。
ファクタリングには総量規制が適用されない
ファクタリングには「総量規制」が適用されません。ファクタリングは貸付ではなく「債権譲渡」だからです。
すでに年収の3分の1以上の借り入れがあってもファクタリングを利用できますし、年収の3分の1以上の額の債権を譲渡して一気に高額な資金を調達することも可能です。
ファクタリングを利用しても銀行融資に影響しない
ファクタリングは貸付ではないので、利用しても信用情報に登録されません。
将来銀行融資を受けるとき、銀行が信用情報を参照してもファクタリングの利用記録は出てこないのです。
ファクタリングを利用したことによって銀行に融資をしぶられる危険性はありません。不安定なフリーランスこそ、いざというときに備えて、信用情報はきれいな状態にしておくべきです。信用情報に影響しないファクタリングであれば安心して利用できるでしょう。
ファクタリングを利用してもブラックリストにならない
ファクタリングを利用した場合、万が一ファクタリング会社へ支払いを滞納してもブラックリスト状態にはなりません。
そもそもファクタリング会社は信用情報機関に加盟していないケースがほとんどです。
加盟している業者でも、ファクタリングの支払い遅延情報を信用情報機関へ通知しません。
ブラックリスト状態になると非常に不便なだけではなく信用や仕事を失う可能性もあるので、フリーランスにとっては「ブラックリスト状態になるリスクがない」ことも大きなメリットといえるでしょう。
ファクタリングを利用しても自分の財産で支払う必要がない
ファクタリングの4つ目のメリットは「自分の財産で支払う必要がない」ことです。
ファクタリングで資金調達を受けた場合、その後に自分で債権回収して回収した金額をファクタリング会社へ支払えば、義務を果たしたことになります。取引先が支払いを渋ったり倒産したりしたときには、自分が代わりに払う必要はありません。
つまり「取引先が払うかどうか」がすべてであり、フリーランス本人の財産を引当にされる可能性がないため、自分の財産を取り立てられる心配がないのです。
消費者金融などの場合、支払えなければ訴訟を起こされて自分の財産を差し押さえられてしまいます。それと比べると自分の財産で支払う必要のないファクタリングには差し押さえのリスクがなく、多大なメリットがあるといえるでしょう。